結城の暮らし INTERVIEW 結城での多様な暮らし方を実践する方々に、結城の暮らしについてあれこれ伺います。

おいしい野菜をつくるには、働きやすい環境から|農業生産法人有限会社菅井ファーム・菅井渉さん、助川すみれ子さん

結城市の南部、筑波山を見渡す広大な平野に、どこまでも広がる農地。結城市の農家、「菅井ファーム」の圃場では、秋晴れの中、収穫されたばかりの玉のようなレタスが水滴を帯びまぶしく光っていました。トラックに積み上げられたレタスは運び出され、それが済んだかと思うと、また荷台が空のトラックがやってきて、その荷台に収穫されたレタスが、またどんどん積み上げられていく。

スタッフたちが黙々と働き、トラックの音だけが響き渡る。それが、この時期見られる菅井ファームの日常です。菅井ファームでは、レタス、白菜、ネギの3種類に絞った、野菜づくり農家。若い女性から外国人技能実習生まで、9名が働いています。

今回のインタビューでは、農業生産法人有限会社菅井ファーム専務取締役菅井渉(すがい・わたる)さんと、東京出身で、2020年10月に結城にやってきたばかりの女性スタッフ、助川すみれ子さんのお二人に話を伺いました。

楽しく働ける職場のために、主要作物をネギに転換 

菅井ファームが目指すのは従業員の暮らしを一番に考えた、独自の経営。そのためには、広く農地を管理するため長期的な担い手が必要不可欠。近年は、日本人の雇用に力を入れているそうです。

農業と聞くと、労働時間や休みの取りにくさなど、労働環境の厳しさを思い浮かべる人もいるかもしれません。実は、菅井ファームでも以前は、繁忙期になると仕事を終えるのが夜の8時や9時になるのが当たり前、という時期もあったそうです。

そこで菅井さんは、「休みが取れない。終業時間が遅いと買い物にいけない」という現場の声に耳を傾け、3年前に、夏作の品目を花からネギに転換。というのも、ネギは収穫時期の労働に偏りが少ないので、従業員が決められた就労時間で仕事を終えやすいからだそうです。

夏作の品目を花からネギに切り替えることで労働環境を改善。とはいえ、ネギに切り替えた当初は、当時誰もがネギづくり未経験。スタッフ総出で試行錯誤をに取り組んでいたそうです。

「もちろん大変でしたが、今思い出すと楽しかったですね。一丸となって、みんなで前を向いてがむしゃらに取り組んでいました。『さあやるぞ』という雰囲気がありましたね」

現在は、スタッフも増え従業員が週1回休みを取れる環境が整ってきた菅井ファーム。

「規模を拡大してひたすら稼ぐで、はなくて、楽しく仕事をしてもらいたいですね」

つい昨日は、レタスの出荷ケース数が、菅井ファームで過去最多だったそうです。これも、「楽しく仕事ができる」雰囲気があってこそ。「職場の雰囲気がいいと、1日でできる生産量も自然と増えますね」と菅井さんは語ります。

現場で感じる、野菜を作る喜びと責任

そんな、楽しく働ける環境づくりをしている菅井ファームに、2020年10月から働いているのが、助川すみれ子さん。

結城にやってきたばかりの助川さんは、東京出身で6月まで横浜のマリーナで接客の仕事をしていた「バリバリの都会っこ」。結城来たのは今回が初めてで、農業も未経験。まさに初めてづくしの中だが、菅井ファームの中でいきいきと働いています。

「新型コロナウイルスによる自粛をきっかけに、仕事に対する考え方が変わりました。そこで、食に関わる仕事や、生活の根底に関われる仕事がしたいと思ったのが、農業の世界に行こうと思ったきっかけです」

助川さんが就農先を探すときは、一次産業専門の就労サイトを活用。農業に関する求人はいくつか見つけることができたが、東京からも近いこと・週1回しっかり休みがあること・女性スタッフがいること、を基準に菅井ファームを選んだそうです。

就農後は、農業には圃場で行う屋外作業だけでなく、室内で行う作業もあることを知り「農業=外の仕事という概念が変わり、農業の奥の深さを感じるきっかけとなった」と感じたとのこと。

インタビュー当時、助川さんは、菅井ファームに就農してまだ2週間。ですが生活はとても充実を感じており、1週間に1度休みはとれるのはもちろん、異文化の中での交流をしたり、他のスタッフや地域の人と趣味の話しで盛り上がったりすることもあるそうです。結城は東京からも近く買い物するところも多くあり便利で、住まいを決めるときも、地元の方が親身になってくれて心強かったとのことです。

休日の楽しみは、「もっぱらショッピングと自転車」。今では、自転車で結城の街を巡りながら、街のいいところを探しているところだそうです。なんと助川さんは、「自転車も、東京から『漕いで』持ってきた」というアクティブ派。

菅井ファームに就農し、一番印象に残ったのは、レタスが消費者に届けられる場面を見たとき。「嬉しかったし、責任のある仕事だなと思いました」と感じたそうです。まだスタートしたばかりですが、少しずつ、食や生活に関わる仕事をしたいという夢に近づいてきている助川さん。「目標は、大きな機械を扱えるようになりたい」と話す助川さんの表情は、とても清々しく輝いていました。

楽しさも魅力も、「人」が伝える

菅井さんは、助川さんが面接に来た時「元気で明るくいい人だ」と第一印象を受け、農業未経験ながらも、人柄に惚れ込み採用を決意したそうです。菅井さんは青年会議所の街づくり委員会の委員長としても活躍されているところ。人柄を大切に助川さんを採用したように、街づくりで大切なのも、やはり「人」。

「街づくりも採用も同じだと思います。元気な人は元気を伝えられるし、楽しんでいる人は楽しさを伝えられる。魅力的な人が集まれば街も魅力的になる。そんな人たちに、結城に来てほしいですね。一緒に結城の街を盛り上げていきましょう」

 

※この記事は、2020年度開催「ことばを紡ぐゼミ」の受講者により、取材・執筆されました。

取材・執筆:清宮慎吾(茨城県水戸市
筑西市出身。普段は観光業を中心に仕事を行っています。趣味は海外・国内旅行 グルメ全般。妻と子供と3人暮らし。

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