結城の暮らし INTERVIEW 結城での多様な暮らし方を実践する方々に、結城の暮らしについてあれこれ伺います。

世の中がどんなに進化しても、人と人とのつながりを大事にしたい|株式会社結城ショッピングセンター・岩瀬展昌さん

「バイヤーである自分は男性なので、実は顧客である主婦のニーズと『読み』はズレがある。むずかしいけど、それもおもしろい」

そう語る岩瀬展昌さんは、結城市にある「結城ショッピングセンター」の食肉・惣菜担当のバイヤー。日々、結城の人々の生活とそこにあるストーリーを思い描きながら、年間の販売計画や売り場を作ります。岩瀬さんに、結城で働く人として、スーパーマーケットの売り場からは見えてこない、裏側のおもしろさについて語っていただきました。

長く一緒に過ごす仲間、長く勤められる職場

結城ショッピングセンターは1953(昭和28)年に設立。茨城県・栃木県で5店舗のスーパーマーケットを運営する。結城市の店舗は「うおとみ結城店」。結城駅から徒歩でおよそ5分の立地にあり、店舗1階に野菜・果物・肉・魚・惣菜などの食料品や生活雑貨を販売しています。

50代のスタッフが多く、新卒で入社以来22年勤務している岩瀬さんは「まだまだ若手の部類」なのだそう。

ついつい気になる、他店の陳列スタイル

会社の仲間とは休日も一緒に、ゴルフに行ったり、大洗へ海釣りに行ったりするそう。ゴルフや釣りを始めるきっかけを作ってくれたのも、会社の仲間。「アットホームな職場なんですね」と聞くと「厳しさもあるが、居心地のいい職場なのだと思う」と笑顔を見せてくれました。

仲間と過ごす以外の休日は、他社スーパーマーケットを見に行くことがあるそう。そこで、どんな商品を、どんな値段で、どんなPOPをつけて、どんな陳列をしているのかを「観察」。

「地方のスーパーは大手スーパーに比べて購入点数が1点少ない。埋めるためにはどんな陳列がいいのか」「ここは関連付けた陳列が上手い」など、考えながら店内を散策。
「いわゆる職業病ですね。買い物に行ったら気になって見てしまう。自分の職場でなくても、陳列が散らばっていると、ついつい直してしまうことも少なくない」

入社するまでスーパーマーケットの仕事を漠然としか理解していなかった岩瀬さんは、今ではすっかり「スーパーの中の人」。

想像するのは消費者の生活とそこにあるストーリー

通常、スーパーマーケットでは1年の販売計画を56週に分けて計算。販売計画を立てる時、岩瀬さんが思い浮かべるのは、地元消費者の生活とそこにあるストーリー。お盆に帰省する息子や孫、年末に都内から帰省する学生、そしてそれを迎える結城に住む家族。お客様や、久々に帰ってくる家族をもてなすのに、こんな食材や、こんな惣菜はどうだろう、こんな提案をしてみよう。

しかし、2020年は新型コロナウイルス感染症の流行もあり、これまでの数字や常識は通用しない事態に。それでも、「もともとバイヤーの仕事は博打のようなもの。バイヤーは男性が多く、通常でも主婦の考えと合わないことも少なくないんです。でも、それが販売計画の面白さでもあります」と語る岩瀬さん。

大手チェーンに負けない「ローカルスーパーマーケット」

「うおとみ結城店」は大手スーパーマーケットでは取り扱わない地元生産者の醤油や酒、ビールなども取り扱っています。これも、大手スーパーマーケットとの差別化のひとつ。地元の伝統的な食べ物「すだれぶ」が継承者不在で消えてしまいそうになった時にも、「うおとみ」が名乗りを上げ、自社でオリジナルの「すだれぶ」を製造・販売するようになりました。惣菜ですぐに食べられる「すだれぶ」は、岩瀬さんのお気に入りの一つだそう。

「そういう提案がもっとできるようになれば、大手スーパーにはない強みになる。歴史をつないで後世に残る商品開発や、地元によりそう商品展開ができれば、他との差別化になり、ローカルスーパーが生き残ることができると思います」

人と人のつながりを大切にした地域のお店を目指す

岩瀬さんはこれからの高齢化社会や人口減少も見据えた人材育成と、作業の単純化やシステム化に力を入れたいと考えています。

スーパーは売り場にスタッフがいなくても、見えない製造の部分にスタッフが多くいます。実際にお客様と関わるスタッフに人数を割けないのが課題でもあるそうです。

国内でも大手小売店が無人スーパーに向けた取り組みを開始している中、システムや価格で太刀打ちできないローカルでは、「今こそ人と人のつながりを大事にしたい」と岩瀬さんは想いを語ります。

「ちょっとした気遣いとか、笑顔で挨拶をするとか、今まで地方にあったいいものをなくさず、残すためにも、『人と人のつながり』を大事にしたいですね。メーカーより最終消費者と近いところにいて、厳しい意見や嬉しい言葉をいただけるからこそ、この仕事は面白い」

人との接点があるからこそ、楽しさや面白さを得られるローカルスーパー。岩瀬さんはここ結城で「ローカル」ならではの働き方を、今も楽しんでいるところです。

 

※この記事は、2020年度開催「ことばを紡ぐゼミ」の受講者により、取材・執筆されました。

取材・執筆:北林夏(栃木県足利市
北近畿出身。北関東へ来て10年になります。3人の子どもたちを中心にやかましい毎日を楽しんでいます。

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