結城の暮らし INTERVIEW 結城での多様な暮らし方を実践する方々に、結城の暮らしについてあれこれ伺います。

「地域の色々な人と関われるのは、働いていてすごく楽しい」:yuinowaスタッフ小貫プレゼンテーション@「コミュニティ女子meeting! vol.2」

2018年3月13日、「コミュニティ女子meeting! vol.2」が開催されました。

登壇者として、結城市への移住者で、yuinowaスタッフでもある小貫も参加。移住の経緯や、yuinowaでの仕事について話をさせていただきました。

本記事では、イベント会場で行われた小貫のプレゼン内容をお伝えいたします。

都内からの移住を考えている方、地方でのコミュニティづくりに興味のある方、ぜひご一読ください。

「コミュニティ女子meeting!」とは?

最近よく聞くようになってきた、「コミュニティ」という言葉。

地方や地域での新しい生き方や社会とのかかわり方が生まれていく中で、コミュニティ作りに参加したい、という人も増えてきたように思えます。

「コミュニティ女子meeting!」では、そこにチャレンジする女性の実体験をもとに、参加者みんなでコミュニティづくりの楽しさ、大変さを共有。多様でより良いコミュニティづくりのきっかけをつくる場所です。

今回は、現役コミュニティ女子として、yuinowaスタッフ小貫の他、西山芽衣さん(HELLO GARDEN/西千葉工作室/株式会社マイキー)、青木優莉さん(特定非営利活動法人シブヤ大学)が登壇。モデレーターとして、平賀めぐみさん(BUKATSUDO/株式会社リビタ)も参加しました。

「地域の色々な人と関われるのは、働いていてすごく楽しい」:Coworking&Cafe yuinowスタッフ小貫那子

小貫 那子(おぬき・ともこ)
2016年4月 結城に移住 繊維工業指導所にて研修し、その後、結城紬を織る機屋にて機織り開始。
私の祖母が結城出身だったという事と自分の手を使ってものを作るという事を仕事にしたいと思っていたところ、結城紬の織り手募集を見て、茨城県結城市へ移住。
現在は製品を織る織り手をやりながら、その傍らまちのコミュニティをつくるコワーキング&カフェyuinowaでスタッフとして働く。
伝統工芸の担い手とコミュニティ作りの二刀流という珍しいスタイルをおこなっている。

 

※以下、注釈がない限り、話し手はすべて小貫です。

こんばんは、yuinowaのスタッフの小貫那子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

私の場合、コミュニティという場所で働いてまだ半年ぐらいのペーペーなので、つたないお話になってしまいますが、どうぞ皆さまお付き合いいただければと思います。

まずは、今日お話する内容の流れをお伝えしようと思います。

1つ目がyuinowaに関して。2つ目が、私がこの仕事に就いた経緯。3番目が自分の仕事の内容と、yuinowaの活動事例。4番目は仕事の中で大変なこと、最後の5番目は楽しいことについてお話しします。

Coworking&Cafe yuinowaの紹介

そもそも、結城市ってご存知の方いらっしゃいますか?(会場内で挙手)・・・・・・けっこういらっしゃいますね、ありがとうございます。結城市は茨城県の西に位置するところにあるんですね。

※小貫のスライドより抜粋

結城市は、もともとは城下町ということもあり、蔵造りの建物が多いです。こちらの写真は、yuinowaの近くにある健田須賀神社という場所。街にはすごく情緒あふれる雰囲気が広がっています。そんな中にあるのが、yuinowaです。

※小貫のスライドより抜粋

こちらは、yuinowaの間取りです。入口を入ってすぐのところにラウンジがありまして、その右側にチャレンジキッチンがあります。

そこには、いまは喫茶店「イチハチサン」というお店が入っていて、その店主に場所をお貸ししています。この「チャレンジキッチン」というのは、まずはこの場所でお店の基盤を築いてもらって、その後は願わくば結城市の中でご自身のお店を構えてもらうためのトライアルスペースとしての役割を持っています。

※小貫のスライドより抜粋

ラウンジから一段上がったところには、床の間、栗の間、奥の間があります。「栗の間」という名前は、写真だとちょっと見えづらいのですが、窓の奥に栗の木があるのでこの名前がつけられました。奥の間は、引き戸で仕切られている空間なので、集中した作業のできる場所です。

※小貫のスライドより抜粋

2Fはシェアオフィスがあります。全部で4部屋ありまして、まだ部屋の空きがありますので、ご興味ある方はお声掛けください。今現在は、建築士の方とフォトグラファーさんが入居されて仕事をしています。

あと、先ほどの栗の木のある中庭も、イベントなどで使っていただければと思います。

モデレーター 平賀:使われた事例などもあるんですか?

中庭の蔵がありまして、その蔵を掃除する蔵ざらいイベントとお餅つきを企画たことがあります。みんなで蔵の中を掃除した後に、餅つき大会で楽しみました。

yuinowaの建物は、もともとは呉服屋さんでした。そのお店が移転して空き家となったところを活用しようということで、現在のようになりました。

※小貫のスライドより抜粋

この写真はyuinowaを作る前の、片付けの様子です。建物内に荷物がたくさん残されていました。写真に写っているのは、ほんとうに一部ですね。屋内から運び出した荷物やゴミをトラックに積んで積んで積みまくって、ゴミ処理場に何度も運んで、きれいになったのがこの写真です。

yuinowaで仕事をするようになった経緯

そのyuinowaに、私が仕事としてついた経緯についてお話しします。

まず私の経歴ですが、1985年、東京生まれで、東京造形大学というところでデザインを学びました。その後2010年にテキスタイルの学校で勉強しまして、卒業後は会社勤めをしていました。アパレルの企画業と、出版社での営業事務とSNSの発信などですね。

ですが、東京造形大学で学んだこととか、テキスタイルデザインで学んだ知識などを活かした仕事ができればな、という気持ちがあって、2016年に結城紬をやりたいと思って結城に移住します。

なんで東京でやってきたのに結城に来たの?と聞かれることもあります。自分はテキスタイルの勉強をしていたし、実は私の祖母が結城の生まれで、祖母の母が、結城紬を作る仕事に携わっていたということもあるんですね。

そういうこともあって、結城紬の仕事をしたい、機織りをしたいと思い、2016年に結城紬の研修所に行って研修を開始しました。

で、まず研修を1年終えて、2017年から結城紬の製品を織る織り手として、「幡屋」という結城紬の工房のような場所に入りました。

ここで生々しい話なんですけど、織り手の仕事ってすごくお金にならない仕事なんですね。なので、織り手とは別にアルバイトをさがしていたところ、こういう仕事があるんだけどどう?と声をかけてもらって、yuinowaのスタッフをやることになりました。

ちなみに、結城紬をご存知の方いらっしゃいますか?(会場内で挙手)・・・・・・ありがとうございます。結城紬は、つまりは着物なんですけど、普段着として使われる着物なんですね。

モデレーター 平賀:晴れ着ではないので、結婚式などでは着られないみたいですね。知らなくてびっくりしました。

そうなんです。その割にお値段が高価で敬遠されがちなんですね。なので、なかなか買い手がつかないということもあって、織り手としてだけで生活していくのは難しくて、アルバイトを始めたということになります。

yuinowaという場所への疑問

ですが、私はyuinowaの仕事をいただいたときに、こんな気持ちがありました。

まず、「なんで、人通りのない田舎の通りに、人が集まるスペースを作るんだろう?」ということ。

あと、「なぜ、お金をいただいて場所を提供する、というサービスをやるんだろう?」という疑問もありました。田舎って土地が大きいところが多く、貸しスペースや図書館でも無料でWi-Fiを使えたりするし、安く使える場所や無料で使える場所って少なくはないんですね。

それに、本当に年配の人しか歩いてないんですよ、結城の街の中って。「コワーキング」っていう横文字を言っても、おじいちゃんやおばあちゃんたちは「なんだっぺ?」という顔をしているんですね。そういった方たちが大半をしめるなかで、「なんでこの場所でコワーキングスペースをやるんだろう」っていう気持ちもありました。

ですが、実際に働くことによって疑問が解消されていきました。「どうやって解消されていったか」というところを、yuinowaでの活動事例と合わせて、これから説明していきたいと思います。

疑問①:「なんでこんな田舎にコワーキングスペースを作ったの?」

私は、月曜から金曜は機織りをしています。なので、私のyuinowaへの出勤は土日となります。土日は、平日とはちょっと違うyuinowaの雰囲気になりますが、その中で「こんな田舎になんでコワーキングスペースをつくったの?」という疑問が解消されました。

土曜と日曜は、地方ということもあってか観光でお越しになる方が多いですね。サイクリングで栃木県から来たという方、茨城の水戸市のほうから来たという方もいれば、ハイキング気分で街をあるいています、という方もいるし。

そんな方に観光案内をしたり、「このお店がおいしいですよ」というお話をしたり、「ここで結城紬の体験できますよ」「ここで結城オリジナルの製品売ってますよ」といったおススメをしています。

そういうことをしながら「あっ、そうか!」と思って。

観光に関する情報は、結城駅前に「結城市民情報センター」という施設があるんですけれども、来た人に寄り添えるような観光案内所は、今の結城には意外と無いなと思って。でも、そういった「あればいいのに」っていうのを解消するためにこういうスペースがあるんだな、と思いました。

来た人に喜んでもらう、というのも一つのコミュニティに関わる仕事だと思うんですね。

なので、「こんな田舎になんでコワーキングスペースをつくったの?」という疑問は、「yuinowaには観光案内所としての機能もある」ということで解消されました。

今のところ計画中なんですけれども、yuinowa発信の結城の街なかマップを作ろう、という話もでていて、現在少しずつですが進めているところです。

疑問②:「図書館や貸しスペースなど安く使える場所は他にもたくさんあるはず」

「図書館や貸しスペースなど安く無料で集まれる場所はたくさんあるのになぜ」っていうところに関する疑問についてです・土日は、平日に比べてイベントでのご利用が増えてくるんですね。で、今までyuinowaではいろいろなイベントをやっています。

※小貫のスライドより抜粋

まず、コーヒー染めワークショップ。喫茶店イチハチサンで出したコーヒーの出がらしで、自分の持ってきた布物を染めるっていうワークショップのイベントです。
ラウンジの机をどけてイベント会場にしました。この写真が、出がらしのコーヒーから煮出した染料なんですけれども、これで染めて、お持ち帰りいただきました。

※小貫のスライドより抜粋

写真のみんなが手に持っているのは、これ、小鳥型の消臭剤なんですよ。染め終わった後のコーヒーの出がらしを、講師の方が作ってきてくださった小鳥型の袋のなかにつめて作ったものです。

※小貫のスライドより抜粋

他にも、ちびっこむけの美文字教室もやりました。この真ん中の方が、yuinowaの平日に入っている三宅というスタッフなんです。以前、甥っ子姪っ子に字を教えていたらしくて、そこからイベントに発展させて「美文字教室」を開催しました。

モデレーター 平賀:このちびっこたちは近所の子ですか?

そうですね。近所の子とか、スタッフ三宅の知り合いの子とか。寺子屋的な感じで、字を添削してもらって、自分で書いてみて、最後は額に飾って持ち帰る、というイベントでした。

※小貫のスライドより抜粋

あと、こちらはベビーマッサージのワークショップ。

赤ちゃんにオイルでマッサージをするときは、目と目を合わせながら行うので、コミュニケーションにもなるんですね。マッサージをすることで筋肉もほぐれるし、赤ちゃんも多少の筋肉も使うので、程よく疲れて夜もぐっすり眠れる、という効果もあるので、これをきっかけに取り組んでいくママさんも増えていくのでは、というのもあります。

※小貫のスライドより抜粋

講師の先生たちから、イベントを通して言っていただいたこともあって。たとえばコーヒー染めワークショップでは「土間」というスペースがあるのがありがたい、とのことでした。なぜかというと、染料をこぼしても土間だったらこぼしても水で流せるから、ということです。

あと、スペースが広いので、これだけ大勢の人間がみんなで「染める」という作業をしても、余裕で動けるので使いやすい。

※小貫のスライドより抜粋

美文字教室とベビーマッサージに関しては、どちらも古民家を利用しているので、リラックスする雰囲気にしやすいとのことでした。

そういったことで、なんでほかに図書館とか無料のスペースがあるのにyuinowaを使うのか、という疑問が解消されましたし、この古民家をうまく利用していないと、こういうイベントが成立していなかったのでは、と思いました。

疑問③:「道を歩いていてみても、コワーキングスペースに関係ない年齢層ばっかりだと思う」

※小貫のスライドより抜粋

「道を歩いていてもコワーキングに関係ない年配層ばっかり」だと感じていたことも、「チャレンジキッチン」のおかげで解消されたなと今は感じています。

チャレンジキッチンに入っている喫茶店、イチハチサンのお客さんの層が広くて、年配のかたから下は小学生の子もいるんですね。けっこう入りやすいスペースなんです。

喫茶店に来たお客さんに「隣なんなの?」って聞かれるんですね。そのときに、喫茶店のオーナーが「コワーキングスペースっていう場所で、皆様にこういうふうにお貸ししていて・・・・・・」と説明したり、コワーキングと言わずに「貸し会議室」とか「寄合所」とか言葉を変えて説明してくれています。

なので、「疑問が年配の方が多いのに」というのは、チャレンジキッチンがあったおかげで解消されているな、というふうに感じました。

大変なこと

yuinowaの仕事の中で大変なことをお話ししたいと思います。

※小貫のスライドより抜粋

yuinowaは、このように人との距離感が近いので、良くも悪くも利用者との微妙な距離感のとりかたが難しかったりします。とくに地方の年配の方って、開口一番「結婚してないの?」という感じで平気で聞いてくることもあるんですよね。

そういう質問とかされたり、前の仕事何やっていたんだとかグイグイくるので。でもお客様でもあるので変な対応もできないですし、うまく切り返さないと、と思っています。

※小貫のスライドより抜粋

あとは、古民家なので店内の補修が必要なんですね。こちらの写真は、階段の入り口にかけた暖簾。冬場は、ここから寒い空気がながれてくるので、スタッフの三宅が縫って作ってくれました。障子に穴が開いてボロボロな場所もあるので、そういうのは私がお客さんが来ない時間を見計らって、障子紙を貼り替えたりしています。

モデレーター 平賀:BUKATSUDOでは無い仕事ですね。

コミュニティを作るための環境を整えるという面では、こういうことも必要になってきますね。

楽しいこと

で、次が「楽しいこと」。これに力を入れてぜひ話したいと思います。やはりお二人とBUKATSUDOさんもそうだと思うんですけども、いろんな人と関われるというのは、働いていてすごく楽しいことなんじゃないかなと思っています。

フリーランスで活動されている方とか行政の方とか、地元の商店をされているかたたちなどがyuinowaにお越しくださっています。最近ですと、喫茶店イチハチサンの店主の知り合いで、真壁の石材屋さんの方が知り合いでいて、その方が「現場を見学に行こうよ」って連れて行ってくださって。

あとは、yuinowaのお客さんたちとも飲み会をしまして。先週も飲み会したんですけど、そこには行政の方とか利用者の方とか、喫茶店のマスターやその友達、そして笠間焼焼いている方など、いろいろな職種の方と出会えました。

その方たちと交流することができたのも、私としてはありがたい経験でした。

平日に働いている機織りの仕事は、基本的に個人作業なので、コミュニティでの仕事いただくことによって、たくさんの人とのつながることができたな、と実感しています。

そのほか、個人的な企画として「スナックヲヌキ」というのをやっています。私は歌謡曲が好きなので、レコードをかけながら営業しています。歌謡曲といえば、やっぱりちあきなおみの『夜間飛行』という曲なので、夜間飛行とうテーマでいろんな国の料理を出して皆様に楽しんでいただきました。

そんな、いろんなことができるのがyuinowaだと思います。

これからどんなふうに企画を作っていこうかな、っていうところはありますが、私としては、結城紬をやっておりますので、着物と絡んだイベントをやっていけたらなと思っています。ということで、今後もちょっとした展開をお見せすることができればな、何か企てようかな、と考えているところです。

以上、ありがとうございました。(了)

※主催:株式会社TMO結城(茨城県結城市)
※連携協力:株式会社リビタ・株式会社WAT
※取材・写真・記事:佐野匠

ページ上部へ戻る